堺雅人コメント
――堺さんにとって久しぶりのコメディードラマですが、絹咲正という主人公をどう感じましたか? また、実際に演じてみていかがですか?
僕が演じる絹咲正は、とてもお人よしで、人にうそをついたり傷付けることなく、なるべく優しく生きていきたいという人なんですが、ひょんなことから詐欺師に巻き込まれて、詐欺を働くことになります。
演じてみて、絹咲正は…変な奴だな、と思いました(笑)。これをやりたい、という自分の意志ではなく、すべて人から言われてやるので、そんな生き方でいいのか?と思ってしまいますけれど。でも、お人よしで優しいから、詐欺を働くときでさえ、一生懸命うそをつこう、成立させようと努力するんですよ。
頭では自分をなるべく出さないようにしているけれど、すぐ人を好きになったり、急に笑い出したり、体からは「生きたい」というメッセージが溢れている。やっぱり変なやつだし、そんな人を演じるのは面白いなと思います。
――主人公・正は「絶対にダマせない男」ですが、堺さんは「ダマされたこと」「ダマしたこと」がありますか?
俳優という仕事も、言えと言われたせりふを自分の言葉のように話す仕事ですから、ダマしているといえばダマしていることになりますよね。なので、他人ごとではないかなと僕は思います。
ダマされたことは…女の子のうそ泣きは見破ることができないです(笑)。駅の改札で4歳くらいの女の子が(自動改札機を)ピッてやりたいってワーワー泣いているのを見たことがあったんですが、お母さんがピッとやったら、すぐ泣き止んでサッと入っていったんです。「あの年齢でさえそうなのか!」「すごいな!」と思いました(笑)。
――共演者の印象は?
皆さん一流の俳優さんばかりで、今回ご一緒するのは楽しみでしかなかったです! 門脇さんは初共演だったのですが、まったく初めてという気がしなかったです。いろんな顔を演じられる女優さんですが、今回も謎が多い浅香澪という役を、とてもミステリアスに演じてくださって素晴らしかったですね。
門脇さんは放っておくと、(ロケ地の)森の中を散策しだすんですよ(笑)。「この辺りはこんなキノコが生えているんです」「こんな虫がいます」とか、先生と生徒のようにレクチャーを受けていました(笑)。
広末さんとは久しぶりにご一緒しました。表現者として僕のポテンシャルが1だとしたら、広末さんは100くらいの豊かさを持っていらっしゃる方。笑うシーンがあるとしたら、僕は頑張って笑ったりするんですけれど、広末さんはむしろ笑いすぎないように抑えるような人なので、いつもそのエネルギーを浴びながら、本当にすごい女優さんだな、同じ時代でよかったなと感じています。
生瀬さんもお久しぶりだったので、うれしかったです。とても尊敬している先輩ですし、何より生瀬さんは人生を楽しんでいらっしゃる方なので、すてきなんですよ。あるシーンで、生瀬さん演じる貴島源一郎が、ある乗り物に乗って登場するんですけれど、その乗り物に乗っている生瀬さんがものすごーく楽しそうで(笑)。何度も何度もその楽しさを力説されたので、僕は「購入されたらいかがですか?」と言ったんですけれど、皆さんにはそのシーンを楽しみにご覧いただきたいです。
――視聴者へメッセージをお願いします。
この作品の絹咲正という人は、ちょっとずつ操られて、ちょっとずつうそをついて、ちょっとずつ詐欺師に仕立て上げられていくんですが、なんだかその過程って、役者が台本をもらって、徐々に役を作って、本番に行くまでをドラマにしているような感じなんです。
ちょっとずつキャラが自分のものになっていく感じを、ずっと撮られているみたいな。手の内を全部バラしているようで、商売上、非常に厄介です。「ああ、この程度なのね、堺は」みたいになるんじゃないかと(笑)。あまり人に見せたくない姿を見せてしまっているけれど、視聴者の皆さまには、その姿も見て楽しんでいただければと思います。
NHKエンタープライズ