3つの“ない”を追い求めていけば、テレビはもっと面白くなる
――「クイズ!年の差なんて」は、“世代間ギャップ”という着眼点が斬新でした。
「これは企画が固まるまで1年ぐらい掛かったんじゃないかな。例によって、その間ずーっと考えていたんですが、いいアイデアが浮かばなくて疲れてきちゃったんですよ。そんなある日、会議をしていたら、若いスタッフは意外と一般常識を知らないんだなということに気が付いて。それで試しに黒板に『金色夜叉』(こんじきやしゃ)と書いて…しかも、わざと『叉』に点を打たずに『又』って書いたんですけど(笑)…それで、これを何と読むかって聞いたら、『きんいろよるまた』って答えた子がいてね(笑)。あまりにも情けなくなってバカにしたんです。そうしたら、今度は若い子たちが『じゃあ、王さんはこの言葉分かります?』って、当時流行っていた、いわゆる“ギャル語”を言ってきた。当然『分からない』と答えたら、今度は反対に『こんなことも知らないんですか?』ってバカにされてしまって(笑)。そういう会話の中で、大人からは子供に対して大人の常識を、子供は大人に対して子供たちの間で流行っているものをクイズにして出題したら、トンチンカンな答えが飛び出して面白いんじゃないかと思いついたんです。
これは私の中では一貫していることなんですが、ただおちゃらけて終わる番組は作りたくないんですね。だから、この企画も学術的なバックボーンが欲しくて、比較文化論をやっている知り合いの大学教授に会いに行って、企画意図を説明したら、『人間には精神年齢と肉体年齢があるけど、これは“文化年齢”だね』という言葉をいただいて。そこから、“大人と若者が文化年齢を刺激し合う番組”というコンセプトが出来上がったんです」
――ところで王さんは、今現在のテレビ業界やバラエティー番組の状況についてどう思われますか?
「みんなが箱庭の中でやっている感じというのかな、どの番組を見てもひな壇トークだし、出演者も同じような顔触れがグルグル回っているように見えますよね。作る側も出る側も、冒険をしてないような気がします。“いつも通り”を良しとしてしまっている、というか。でも、クリエイティビティーの観点から言えば、その“いつも通り”が一番つまらない。私は『これまでにない』『他にない』『見たことない』の3つの“ない”を追い求めていけば、テレビはもっと面白くなると思っていて。いい意味で期待を裏切ることが大切なんじゃないでしょうか。これからも、視聴者のド肝を抜くようなイノベ―ティブな番組を作りたいし、作ってほしいですね」