結構先まで考えていまして、もう楽曲制作意欲が止まらないんです
――また、このシングルには2つのカップリング曲も収録されています。
「Love When I Cry」は、最初はシンプルで夜を感じさせるサウンドですが、徐々に音や光が加わっていくようなドラマティックな展開が印象的なエレクトロニック・チューン。
「この楽曲は、デビュー前からストックしてあったもので、いつか発表できたらと思っていたんです。元々は2曲のみ収録のシングルにするつもりだったのですが、それらが両極端な雰囲気だったので、緩衝材のような役割が必要だと思い、この楽曲を引っ張り出してきたという感じでした。でも、作り始めるとアレンジャーのTomoLowさんが、楽曲の世界を広げてくれたというか。小さな部屋の片隅から宇宙へとトリップさせてくれるような展開にしてくださって、とても聴き応えのある仕上がりになりました」
――続く「My Dreams Are Made of Hell」は、タイトルからしてダークな英語ナンバー。「Fly High」などでmiletさんを知ったリスナーにとっては驚く世界になるかもしれません。
「実はデビュー当初はダークめな楽曲を多く発表していたのですが、最近はそういう方向のものを発表していなかったので、挑戦してみたかったというか。『Walkin' In My Lane』がポップな仕上がりなので、その反動で制作してみたくなった原点回帰の1曲です。これは1番、2番みたいなJ-POPのような明快な構成ではなく、異なるメロディー展開で完結させた、新しい試みができた楽曲でもあります」
――この楽曲では、どういう世界を表現しようと思いましたか?
「楽曲を制作するときは、いつもショートムービーのような映像を頭の中に思い浮かべて、それに合う言葉を歌詞にするということが多いのですが、この楽曲では私がクリスマスの夜に見た夢から生まれたものになります。サンタクロースが登場したファンタジーな世界を見たかったのに、実際は悪魔が登場して目覚めが酷くて(苦笑)。それを思い出して完成させた楽曲になります」
――確かに、ティム・バートン監督の映画のような恐ろしさのなかにファンタジーを感じるような仕上がりになっている印象がしました。
「ギレルモ・デル・トロ監督(2017年公開映画『シェイプ・オブ・ウォーター』で、アカデミー作品賞、アカデミー監督賞を獲得)の世界に近いのかもしれませんね。より毒々しさが強い感じ」
――この楽曲のボーカルでは、あえて感情を消しているような印書がしたのですが。
「ビジョンがはっきり見える楽曲に関しては、あんまり声の脚色をしないようにしています。感情を入れ過ぎてしまうと、ドラマティックになりすぎるというか。想像の幅が限定されるような気がする。あえて感情を制限することで、リスナーのみなさんそれぞれに異なる世界やダークさを体感していただきたいなと思いました」
――この3曲でアルバム1枚に匹敵するほどの、聴きごたえですね。
「ありがとうございます!」
――それにしても、半年足らずで1枚のアルバムと2枚のEPを発表。また4月にはツアーを終えて、7月20日には一夜限りのスペシャルライブ「milet 3rd anniversary live “INTO THE MIRROR”」の開催、さらに8月のサマーソニック出演も決定しています。すでに1年分くらいのボリューミーな活動をされている2022年ですが、今後はどんなことを考えていますか?
「実はもう結構先まで考えていまして、もう楽曲制作意欲が止まらないんです。特に4月まで開催していた全国ツアーを通じて、観客の皆さんからたくさんのポジティブなエネルギーをいただいて、さらに制作意欲が増した感じ。今後はフェス出演なども決まっていますし、さらにライブを意識した楽曲を制作したいですし、またポップな楽曲だけでなくダークな部分もより追求していけたらとも思っています」
――最後に、今回のEP『Walkin’ In My Lane』を通じてリスナーに届けたいメッセージをお願いします。
「今回のシングルは、大勢で盛り上がって聴くというよりも、ひとりじっくり自分と向き合って楽しんでいただける作品になったと思います。なかには、孤独を抱えながら日々を過ごしている人もいるはず。これを聴いていただけたら、同じ気持ちを抱えている人は他にもいるんだということを感じていただきたい。孤独であることをポジティブなエネルギーに変えていただけたら。皆さんのそばに寄り添う作品であることを願います」
取材・文=松永尚久
Walkin‘ In My Lane
ソニー・ミュージックレーベルズ 1200円(通常盤)
収録曲●Walkin‘ In My Lane/Love When I Cry/My Dreams Are Made of Hell
みれい=思春期をカナダで過ごし、2018年から本格的に音楽活動をスタート。2019年3月、ドラマ「スキャンダル専門弁護士 QUEEN」オープニングテーマ「inside you」でデビュー。さらに「偽装不倫」の主題歌を担当し話題に。2021年8月に東京2020オリンピック閉会式で歌唱、さらに2年連続でNHK紅白歌合戦にも出場した
公式HP
https://www.milet.jp/