コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットな漫画情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、立葵(たちあおい)さんの「幸せな恋、集めました。」をご紹介。タイトル通り、幸せなカップルたちが登場するショート漫画なのだが、登場人物たちが可愛すぎると評判だ。例えば、Twitterで8.6万いいね(2022年7月現在)を獲得した「リモート会議」。いかにも仕事ができそうなクールな女性主任が会議を取り仕切っているのだが、彼女が目をつけたのは部下の画面に映るアイスクリームのゴミ。部下が怒られてしまうのでは!?と緊張の走る会議だったが、そこに大音声で飛び込んできたのは主任の夫。「みーたん!欲しがってた売り切れ続出のコンビニアイス買ってきたよ〜〜〜!」リモート会議中だと気づいた夫は慌てて退出するも時既に遅し。部下たちはクールな主任が“みーたん”と呼ばれていること、アイスクリームを欲しがっていたことを知ってしまう。そして“みーたん”主任がとった対応により、主任の株は上がっていくのであった。主任の意外な一面とユーモアあふれる対応に、読者からも「主任可愛い!」と多くの声が寄せられた。『幸せな恋、集めました。』では、一見不穏そうに見えたりするカップルもラブラブなのが特徴だ。立葵さんに作品が生まれた経緯や、ハッピーエンドにこだわる理由を聞いた。
「どうせすぐネタ切れするだろ」の声に負けず、3年の長期連載に!
元は別名義で少女漫画を描いていたという立葵さん。
「両親が2人とも絵が上手で、2歳の頃にはお絵描き教室に通っていたということもあり、子供の頃から絵を描くことが大好きでした。『漫画家になりたい』とはっきりと言い出したのは小学校3年生の頃です。少女漫画家を目指して別名義でも描いていました。ただ、当時の担当編集さんの意向もあって、なかなかコメディ要素を入れた内容は描かせてもらえなくって…。何か違うな、と感じて今の形で描かせてもらえるところに移動しました。立葵で活動し始めてからも、私は、キャラクターを動かすのが本当に苦手で。連載の企画を作るんですが、なかなか通らずにいました。逆に、シチュエーションから発想を得て、キャラクターは後付けという形で描くのは得意なので、そのスタイルでやっていきましょうということで、“幸せな恋”という縛りを設けてこの作品を描くことになったんです」
立葵さんの可愛らしい絵柄も相まって、“幸せな恋”というと若い男女カップルの話がメインのイメージになるが、作中にはさまざまな年齢層のカップルが登場する。前述の「リモート会議」に登場する主任夫婦は中年層、「いつもより素直」で登場するのは老夫婦だ。この引き出しの多さも作品の大きな魅力の一つ。豊富なシチュエーション作りはどのように行っているのだろうか?
「自分の体験を元にすることもありますが、映画などの作品を見たりした時に『私だったらこうするのにな』『この子たちを幸せにしたい!』と考えたりしています。連載開始当時ではバッドシチュエーションを調べて、そこからどうやって幸せな展開にするかという方法をとったことも。漫画の専門学校に通っていた時に他の人たちとディスカッションをする機会があって、そこで自分はハッピーエンド好きなんだと自覚しました。そこからは自分にはハッピーエンドが合うんだ、と振り切って描いています」
“幸せな恋”というワンテーマでネタが続くのか?という懸念は読者からもあったそうだが、今やそれも杞憂だ。2019年4月から始まった連載は3年目に突入し、第156集(2022年7月現在)まで公開されている。
「連載開始した時に『どうせすぐネタ切れするだろ』というようなコメントをもらったことがあったんですが、その方が最近になって『ネタ切れするだろなんて言ってごめんなさい』ってコメントくださって、笑っちゃいました。でも、読者の方からの反応は本当に一番の活力になっています。語彙力がなくなって勢いで送ってくださっているコメントも、文字数ギリギリまで描いてくださっているコメントも、全部ありがたいです」
人気カップルは再登場もあり。第1集で登場したカップルは第119集にして関係に進展
キャラクターを動かすことが苦手と語る立葵さんだが、キャリアを重ねていくにつれ、徐々にその苦手意識も和らいできているそう。「いつもより素直」の老夫婦も含め、人気カップルは再登場させている。
「特に気に入っているのは第1集に登場させたヤンキーっぽい男の子と真面目な会社員の女の子のカップルです。最初の1本目カップルということもありますし、キャラで動かした2人でもあるので。この2人は友達からスタートしているのですが、第118・119集でやっと関係が進展しました!2年かかりました(笑)」
『幸せな恋、集めました。』はこれからも続いていくが、恋に限らず家族愛や友情など、さまざまなハッピーなシチュエーションで作品を描いていきたいのだそう。
「少しでも、読者の方のプラスになるような作品を描いていきたいです。大作になるような漫画は描けていないですが、それでも私の漫画を大好きと言ってくださる方々の存在に、いつも助けていただいています。恩返しできるように、私らしい話を私らしくこれからも描いていきたいので、どうぞよろしくお願いします」
自身のハッピーエンド好きは「よっぽどのことが起きなければ、ずっと好きだと思います」と語る立葵さん。幸せな恋をする登場人物たちの姿に、私たち読者の恋心も揺さぶられる。日常の疲れも、笑えてキュンとする漫画で癒やされるはずだ。
取材・文=西連寺くらら