映画監督の顔も持つ女優・辻凪子「監督としても女優としても、自分オリジナルのシチュエーションコメディーをテレビ番組でやりたい」
――在学中には監督兼主演でショートフィルムも作っていたということですが。
お芝居は授業で学んではいたんですけど、私が入ってからプロと劇場作品を作るっていうプロジェクトが中止になってしまって、「(作品に)出たい!出たい!」って焦っていたんです。授業を受けるだけで物足りなくて、ゼミで企画を出すのは誰でもできたので、自分で出したら通ってしまって(笑)。
それが自分が一番やりたかったコメディーで、友達は誰もコメディーを作ってなかったから、じゃあ自分で監督をして主演も自分でしたいなって思ったんですけど、そこもなかなか言い出せなくて。
でも、そのとき教授をしていた映画監督の青山真治さんが「どっちも自分でやりなよ」って言ってくれて、それで初めて「ゆれてますけど。」っていう短編映画を撮りました。
それが思ったよりも評価を頂いてしまって(笑)、ロンドンの「クリスタルパレス映画祭」で上映され300人くらいの海外の方に「ブラボー!」って言っていただいて、そのときに「俳優だけじゃなくて、作りたい」って思ってしまい、そこからどっちもやるようになりました。
自分の書いた1行が、カメラさん、照明さん、衣装さん、役者さん…全員の力で1つの映像になって、想像をはるかに超えたものが出来上がる喜びを知ってしまうと、いつも作る過程は大変なんですけど、「また作ろう」って思ってしまいますね。
――今も女優だけでなく監督業もされていて、今冬には監督・主演を務めた活弁映画「I AM JAM ピザの惑星危機一髪!」が公開されるんですよね。
私も大学まで活弁を見たことなかったんですけど、初めて見たときにこんな娯楽があったんだって、日本に昔からある文化なのに、私にとってはすごく新しい娯楽に感じたんです。無声映画と生の語りと生のピアノ演奏、この3つが重なったときにすごく感動しました。
見た人が誰でも面白いって思ってもらえる娯楽なので、ぜひ見てほしいと思います。活弁って名前は知られてきたんですけど、まだ見たことがない人がたくさんいると思うので。
みんな大人になって忙しくなっていくけど、子供心に戻れるような作品を作りたいなと思って、本当におもちゃ箱をひっくり返したみたいな、今まで見てきた楽しいものをこの映画に詰め込んだので、ぜひ見てほしいです。
――活弁映画ということは、活弁士さんと一緒に映画館を回っていくんですか。
そうですね。ロングランではなく1週間ずつ地方を回っていくというのを企画しています。できるだけスクリーンの近くで見てほしいので、ミニシアターで上映したいと思っていて、東京は12月3日(土)にポレポレ東中野で上映します。
――これまでいろいろな作品に出たり、作ったりしていらっしゃいますが、特に印象に残っている作品は何ですか?
一番見てもらえたのはやっぱり“朝ドラ”の「わろてんか」(2017年NHK総合)ですね。在学中だったんですけど、ドラマで初めて頂いた大きな役で。1カ月稽古して1カ月撮影っていう2カ月を過ごして、そういうふうにドラマに携わることがなかったので、一番印象に残ってます。