第1作「仮面ライダークウガ」('00~'01年テレビ朝日系)から10作目の「仮面ライダーディケイド」('09年テレビ朝日系)までの“平成ライダー”シリーズをはじめ、「仮面ライダー」のテレビ版や劇場版を数多くプロデュース。現在放送中の「仮面ライダーエグゼイド」(テレビ朝日系)に至るまで、45年にも及ぶ「仮面ライダー」の歴史に多大な功績を残してきた白倉伸一郎氏。東映のプロデューサーとして、他にも“スーパー戦隊”シリーズなどを手掛ける彼は、どんな思いを抱きながら、これらの特撮ヒーロー作品を作り出しているのだろうか。
プロデューサーはバランスよく幅広い知識を持っていないということに気付きました
──まずはこの世界を志したきっかけからお聞かせください。
「学生時代、細野不二彦さんが描かれた『あどりぶシネ倶楽部』という漫画に、ものすごく影響を受けまして。大学の8ミリ映画同好会の話なんですけど、プロデューサーの片桐という登場人物がいるんですね。その片桐が大好きで、漫画を読んでいるうちに、『プロデューサーって、テレビ局やスポンサーがクリエーターに対して無理難題を言ってくるのを、毅然として守るのが仕事なんだ』と勝手に思い込んでしまって。自分もこんな風に、クリエーターの夢と希望を守る仕事に就きたいと思ったんです。だから東映の面接を受けたときにも、『制作の現場とその周りの関係者たちとの間に立って、政治的な折衝を行う人間が必要だ』とか青臭い御託を並べ立てたわけですよ。今思うと、こんな僕を受け入れてくれた東映という会社は、本当に度量が広いなと(笑)」
──実際、東映に入社されてみて、いかがでしたか?
「まず思ったのは、クリエーターにテレビ局やスポンサーが無茶を言ってくる、なんて対立構図は存在しないということ(笑)。それと、世の中にはすごい人がいっぱいいるんだなということですね。監督や脚本家の方々はもちろん、会社の中にも、僕には想像もつかないような発想ができる人がたくさんいて。理屈先行で入社してきた自分は、この先、何ができるんだろうと愕然としましたね。でも、そんなすごい人たちと接していくうちに、自分が彼らと肩を並べて仕事できるようになるためには、バランスよく幅広い知識を持っていないといけないんだということに気が付いて。ものづくりをする人なら、数学は5だけど国語は1、みたいなタイプでもかまわない。その点、自分はプロデューサーなので、オール5は取れなくてもオール3くらいは取れるようにしておこう、と」