太田光が“言葉の力”を信じる理由「最終的に人を救うのは言葉だという実感がある」
――また今作では、「言葉の持つパワー」が一つのテーマになっていると感じました。太田さんが、“言葉の力”を信じているのはどうしてですか。
それは、僕が今まで読んできた本、観てきた映画の中の言葉に、僕自身が救われてきたからだと思います。高校時代の孤独だった時には小説や映画に助けられてきたし、それらの作品がなかったら自分は生きてこられなかった気がするし。だから、最終的に人を救うのは言葉だという実感があるんですよね。
――作中の人物のセリフでは、「恥をかいて馬鹿にされ、皆から嘲笑される。それが私が思う最も偉大なコメディアンの姿だ」という一言が印象に残っています。太田さんご自身の哲学を反映したセリフだと思うのですが、「浅草キッド」で出てきたような「笑われるな、笑わせろ」というセリフとは真逆の価値観ですよね。
(ビート)たけしさんのね。俺はたけしさんが大好きで、そのたけしさんの矜持はもちろんカッコいいと思うんだけど、お笑いというものがあまりにも上にいき過ぎるのも嫌だなとも考えていて。みんなからバカにされてこそ芸人だし、「あいつバカだな」となるのが好きなんだよね。もちろんたけしさんがお笑いの地位を飛躍的に上げてくれたことは間違いないんだけど。
だけどやっぱり俺は、鬼瓦権造のメイクをしてるたけしさんが好きで(笑)。だから、今の若い連中がお笑いに憧れて、すごい職業だと思っているのはとても良いことだと思うんだけど、あまり意識を上にもっていってほしくないというか。視聴者ももっとバカにして見てほしい気持ちもあるし、やっている我々からしても嘲笑ですら笑ってもらえればありがたいので。
――過去のインタビューでは「視聴者はテレビに期待し過ぎている。信じ過ぎている」という旨のことをおっしゃっていましたよね。
それは本当にそう思いますね。テレビのちょっとしたことで批判が殺到するのは、「テレビはすべて正しい」という考えが実はベースにあるんじゃないかという気がしていて。それを見ていると、「テレビなんて所詮、ろくでもない連中の集まりなんだからさ」という思いもあります。だって、渡部(建)なんて不倫してないわけないじゃん(笑)。