爆笑問題の太田光が、11年ぶりの新作小説「笑って人類！」を出版する。本作は、極東の小国“ピースランド”の冴えない首相が、世界の平和のために立ち上がる物語。原稿用紙にして1200枚の大作だが、太田は「漫才やコントを作る場合とは違い、発想次第で好き勝手書けて制約がない」と小説執筆の楽しさを振り返る。小説では「言葉の持つパワー」が一つのテーマになっているが、太田は「今まで読んできた本、観てきた映画の中の言葉に、僕自身が救われてきた」と“言葉の力”を信じる理由を明かす。また、爆笑問題はコンビ結成35周年となるが、「自分たちでは“大御所”とは思ってない」とのこと。「いまだに若手より前に出たい」「若手より一個上のステージに行きたいとは全然思わない」などと、今もなお新ネタをつくり続け、“笑いの最前線”に立ち続ける矜持を語った。
小説は「自分の思い通りに好き勝手に書ける」漫才との違いを語る
――まずは「笑って人類！」の執筆に至った経緯から教えてください。
最初は映画化を目指してシナリオを2年かけて書いていたんですけど、それがボツになりまして。せっかく考えたものだから何かしら形にして残したいと思って小説にしました。
――本作は、原稿用紙にして1200枚の大作です。日頃漫才のネタづくりもある中での小説執筆は大変だったかと思います。
漫才のネタ作りの時は、田中(裕二)に「なんでこいつはこんなツッコミしかできないんだ」と、いつもイライラしながらやっているんですけど、小説は自分の思い通りに好き勝手に考えたことを書けるので、そこに逃げ込めるというか(笑)。だから書くのは楽しかったですね。
――小説執筆について、どんなところに楽しさを感じているのでしょうか。
漫才やコントを作る場合はある程度限界があるけど、物語の場合は世界中どこへでも飛べるし、それこそ未来や過去に行くことだってできるし。発想次第で好き勝手書けて制約がないところですかね。漫才やコントだと、田中の「こうしてほしい」というかなり狭い制約があるので(笑)。
“時事ネタ”の人間ゆえに「現実に起きていることをナンセンスに変えていく」
――本作は、とある極東の小国の総理大臣が世界平和に向けて奔走するという物語です。こういったストーリーを描こうと思ったのはなぜですか。
僕はカート・ヴォネガットの小説が好きなんですよね。ヴォネガットの小説は、SFなんだけど、社会や政治などあらゆるものを組み込んで茶化していくという世界観なので、その影響を大きく受けていると思います。
――たしかに作中、現実の社会情勢を風刺したような描写がいくつも見受けられました。
僕はやっぱり「時事ネタ」の人間なんですよ。コントにせよ、漫才にせよ、小説にせよ、現実に起きていることをナンセンスに変えていくという発想しかできないんですよね。
