鷲津は怪文書のある言葉から犯人を知る
権力という魔物の恐ろしさ。選挙戦で鷲津は「強い者にも向かっていける、正しい道を突き進もうとする代議士に私はなりたい」と訴えていた。権力を得るのも「大勢の人の力になれる」ためだったはずだ。
だが、竜崎に副大臣のポストは鷹野(小澤征悦)に渡すと言われ、怪文書の処理もできないようであればそんな未来は難しいと指摘された鷲津が、梨恵のことを疑ったときの激変した表情は、震え上がるほどの怖さだった。信念をどこかに置き忘れ、単に権力にとらわれて暴走しているようにも思えた。
疑心暗鬼になって鷹野とも仲違いした鷲津。新たに出された怪文書にあった“竹”の例えから、眞人が差出人だと気付いた。
前半のシーンにあった鷲津が後援会の人にもらったという竹細工が鮮やかにつながった。さらには、これまで描かれてきた植物に詳しい眞人という存在が際立った。
竹細工の原材料である真竹は120年に一度、花を咲かせるのだと説明する眞人。「ぐいぐい伸びてしなやかで、折れない」と鷲津を竹に似ているとしたが、鷲津は「しかもなかなか花が咲かない」と自虐を。眞人は「もう十分立派な花が咲いてるじゃないですか」と言うが、鷲津は「もっと大きな花を咲かせるよ」と語っていた。
眞人は偶然、亡き兄の陳情をあしらったのが鷲津だったと知っても、「弱い側の立場で俺の議員としての力を使いたい」という鷲津を支えるつもりだったが、変わってしまったことに失望したのだ。
竹はめったに咲かない花を咲かせたあと、竹林丸ごと消えてなくなるのだという。「絶対に許さない」という眞人、また「かっこ悪いよ、今のお父さん。最低」という泰生の言葉は鷲津の心に届いたのか。
眞人の兄の件は視聴者の間でも心配されており、「やっぱり」という一方で、「でもまさか」という思いも渦巻いた。SNSには「杉野くんのこんな演技初めてみて震えてきちゃった」「鷲津と眞人のシーン釘付け!!」「ワナワナしすぎた」などの感想が上がり、Twitterの世界トレンド1位に浮上した。
闇落ちした鷲津が戻ってくるのか。あるいは、すべてが壮大な仕掛けだったというかすかな希望も。次回、3月27日(月)放送の第11話が最終回となる。
※「草なぎ剛」のなぎは、弓へんに前の旧字体その下に刀が正式表記
◆文=ザテレビジョンドラマ部
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