“今日を生きる希望”という部分は、最初から浮かんでいたもの
製作期間として与えられた猶予は約2カ月。ドラマ側からは「教場」シリーズを見た感想や、新たにはじまる連ドラの台本を読み、それらの感想を楽曲に投影してほしいということ以外リクエストはほぼなかったという。ドラマのタイアップソングといえば、時に具体的なキーワードや曲のテンポ感までアーティスト側に細かく要望を伝えるケースもあると聞く。そうした制限による難しさを感じるという話を耳にするが、今回のように、Uruというアーティストの感性を信頼した依頼もまた、自由度の高さゆえに大いに悩ましかったようだ。
「はじめに、私の受け取ったものを形にして欲しいと、委ねていただけたことはありがたいことだと思いました。ただ、私の受け取り方がほかの人と大きく変わっていたり、感性が全然違うところにあったらどうしよう…。私の曲は共感していただけるのかなという不安は、すごくありました。
たくさんの方に愛されているドラマですし、私自身もファンなので、そこに突然、異質のものが入ってきたらすごく違和感があって嫌だなと思うんです。なので、新しいドラマの脚本を何度も読み、過去の映像作品を繰り返し見て、体の中に作品を染みこませていきました。ドラマの温度や世界感を私と響き合わせるために、そうした事はとても大切だったなと思います。過去の映像を見ながら、どんな曲がエンディングで流れていたら素直に耳に入ってくるだろう…とか、そういう感覚的なところを大事に制作しました。
脚本を読むうちに、今回のドラマで組むバディの新人刑事や、風間が(SPドラマ『教場』シリーズで)指導してきた生徒たちへ示しそうとしている姿は一貫していると感じました。多くを語らず一歩引いた場所から、しっかりと見守っているというか。そうした佇まいが、まるで雲間から差し込んでくる光が作り出す“天使のはしご”のようだなと。普段は雲に隠れていても、必要な時は雲がパッと開いて温かな光のような手を差し伸べる…。そんなイメージが浮かんできました」
柔らかに揺らぐ歌声やサウンド感から、光に包まれるような安心感や神々しさが伝わってくる「心得」は、ドラマの緊迫感から観る者を解き放ち、癒やしてくれるような感覚すら覚える。歌詞の中の「蕾に刺す雨のように/射す陽のように」という一節は、そうした厳しい現実とひとときの安らぎの鮮やかなコントラストを描くばかりか、ドラマの世界に深く潜り込みぴったりと寄り添ったUruだからこそ生み出せた言葉に違いない。
「まず、メロディーから作り始めたのですが、風間が持っているどっしりとした居住まいを表現したくて、あまり細かな譜割りをせず音数も必要最低限にとどめ、余白を感じていただける曲にしたいと思いました。
歌詞の中で、“今日を生きる希望”という部分は、最初から浮かんでいたものです。命の重さや尊さを描くドラマでもあるので、この曲の軸にもなっていると思います。他の部分は試行錯誤を重ねましたが、“蕾刺す―”の部分は、自分が花が好きなことがヒントになりました。花を見ていて、強い雨に打たれると折れてしまったりしてうまく開けなくなるんじゃないかって、すごく心配になってしまうんです。でも、晴ればかりでも枯れてしまうので、蕾にとって雨も陽射しもどちらも必要なんだなって。そうした気付きのようなものを、風間もきっと周囲に促しているのではないかと思いました。また、ドラマの中でも花を育てることは1つの象徴的なエピソードかなと思うので、この詞が書けて良かったなと思っています。
あまりに曲作りに没頭したせいで、現実では絶対にありえないのですが…、木村さんから『そんなんじゃダメだ』と叱られる夢を見たことも(苦笑)。それほど制作にのめり込んだし、レコーディングでは体に沁み込んだドラマの世界観を頭に浮かべながら曲に導かれるように感情のまま歌っていきました」
※6/7(水)には両曲を収録したシングルCD
をリリース。ドラマ盤、アニメ盤の2タイプのジャケットで発売
収録曲●心得/紙一重/それを愛と呼ぶなら-From THE FIRST TAKE/振り子-From THE FIRST TAKE/心得 -instrumental-/紙一重-instrumental-
(ドラマ盤2500円(税込み)【CD+BD】 特別BOX仕様)
収録曲●紙一重/心得/それを愛と呼ぶなら-From THE FIRST TAKE/振り子-From THE FIRST TAKE/心得 -instrumental-/紙一重-instrumental-
(アニメ盤 2000円(税込み)【CD+BD】 デジパック特別仕様)
Uru 公式HP
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