「ガンニバル」では“後藤家”のリーダーを好演
そして同じく配信オリジナル作品では、2022年12月からディズニープラスにて配信されたドラマ「ガンニバル」の後藤恵介役も、“笠松将ここにあり!”を示すには十分すぎる役だった。
同作は、2018年に連載がスタートした二宮正明の同名サスペンスコミックを実写ドラマ化したヴィレッジ・サイコスリラー。都会から遠く離れた山間にある供花村(くげむら)が物語の舞台で、事件を起こして村の駐在として左遷されてきた警察官・大悟(柳楽優弥)が主人公。一見、犯罪とは無縁ののどかで平和な村のように感じられるが、“この村では人を喰ってる”というウワサがあり、一人の老婦人の奇妙な死によって、大悟も少しずつこの村の異常性に気付いていく。笠松は供花村を支配する一族“後藤家”の次期当主・後藤恵介を演じた。
恵介はコワモテで冷静沈着、粗暴な男が多い後藤家にあってミステリアスな存在感を放つ立ち居振る舞い、時折見せる柔らかな表情…と、笠松自身の魅力を詰め込んだようなキャラクター。物語の序盤、供花村にやってきた主人公・大悟にいきなり因縁をつけたかと思えば豪快に笑ってごまかし、酒を酌み交わして“理解者”っぽく振る舞ったり、喧嘩っ早い後藤家の連中をまとめあげて大悟と適度な距離感を保ったり、先代を亡くして若き当主となった恵介を持ち前の演技力、そして迫力で体現した。
恵介役について、当メディアのインタビューでは「共感できる部分も多かったですし、自分にすごく近いキャラクターだったので演じていて楽しくもあり、難しくもあり、という感じでした」と自分に近いことを認め、共感を示している。
原作漫画における“ドラマの続き”箇所を読む限り、供花村VS大悟(警察)のキーパーソンとなる役どころなので、もしシーズン2があるとしたら…どこまで原作どおりに描かれるかはさておき、よりいっそう恵介=笠松の存在感が作品を彩るはずだ。
ちなみに、「ガンニバル」関連で伝えておきたいエピソードを一つ。これまで彼が演じた役、それに恵介役のおかげで、勝手ながら「笠松=怖い人」というイメージを持ってしまっていたが、2022年12月末、そろそろ大掃除でもしようかという時期に行われた先述のインタビュー取材の際、彼は「こんな年の瀬まで働かせてしまってホントすみません」と、自分だって休みなく働いてそろそろ休みたいだろうに、取材陣に対して気遣いの言葉をかけてくれた。そんなことを面と向かって言われたら、誰だってイチコロだ。
ハリウッドの大手タレントエージェンシーと契約
2022年に放送されたWOWOW×HBO max共同制作のオリジナルドラマ「TOKYO VICE」(WOWOWプライム)では、外国人俳優を相手に流ちょうな英語で話し、バイオレンス&セクシーな魅力たっぷりのヤクザを演じた。彼自身「この作品に携わって自分の人生、いろんな価値観が大きく変わった」と記者会見で話していたが、同年ハリウッドの大手タレントエージェンシー・CAAとの契約を発表。日本のみならず世界を舞台に活躍の場を広げていくんだろうなと予感させた。
笠松はこの春始まった放送中の連続テレビ小説「らんまん」(NHK総合ほか)で蔵人・幸吉役でもいい味を出していたが、7月期にはテレビ朝日系で放送される「シッコウ!!〜犬と私と執行官〜」にレギュラー出演することも決まっている。
同ドラマで、普段は運送会社で働き怖そうな見た目ではあるものの、荷物の運び出しや管理などを手際よく補助し、主人公・ひかり(伊藤沙莉)のことを気にかける良き理解者・長窪桂十郎を演じるという。キャラ説明を聞いただけでもうピッタリな気がしてならないし、脚本はコメディーからシリアスまで魅力たっぷりなキャラクター作りに定評のある大森美香氏。大森氏とは大河ドラマ「青天を衝け」(2021年、NHK総合ほか)以来のタッグだけに、彼の魅力を十二分に引き出してくれるのは間違いなさそう。
誤解を恐れずに言えば、決して彼は“カメレオン俳優”ではない。あくまでも“クリエーターが見たい笠松将”のベストを更新し続ける、職人型俳優なのではないだろうか。それはワントーンな演技ということではなく、職人がたゆまぬ努力によって熟練の技術で毎度傑作を送り出すように、笠松が演技というフィールドで最高のものを見せ続けてくれている。日本の職人が世界でも一目置かれるように、近い将来、笠松が国内だけでなく海外を舞台にして活躍する姿も見られるはずだ。
◆文=ブルータス・シーダ(STABLENT LLC)
https://www.disneyplus.com/ja-jp/series/gannibal
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■笠松将オフィシャルInstagram
URL:https://www.instagram.com/show_kasamatsu_official/