納得のいく植物図鑑を発刊するところがゴール
――まだ脚本は完成していないかと思いますが、ゴールに向けてどういった構想を描いているのでしょう?
脚本を担当する長田(育恵)さんとは、夫婦二人のスタートが「日本中の植物を明らかにして図鑑を作るがじゃ」という大きな目標だったので、やはり納得のいく植物図鑑を発刊するところがゴールですね、と話しています。
寿恵子は「一緒に万太郎さんの図鑑を作るという夢を冒険したい」という思いがあり、そして寿恵子にもある野望があり、それをかなえるために二人が並走していくのが最後の局面になるかと思います。
――そんな万太郎と寿恵子は、かわいらしいカップルから段々と大人の夫婦へと変化していますよね。
そうですね。結婚するまでのかわいらしいカップル、そして新婚時代を経て、最近はとても大人な夫婦になっていますね。第16週の一緒に石版印刷に取り組むシーンは円熟味を感じられて、神木さんと浜辺さんがちゃんと年を重ねているさまを上手に表現されていてさすがだなと感じました。
キャスティング秘話を明かす「スタッフの頑張りが認められてうれしい」
――「らんまん」では、万太郎だけではなく、周りの登場人物のバックグラウンドまでとても丁寧に拾っている印象がありますが、松川さんはどのように感じられてますか?
企画段階で長田さんがキーワードとして「広場みたいなイメージ」「富太郎さんという広場に集まった人たち」とおっしゃっていました。
「万太郎という太陽、広場に集まる人たちが、それぞれいろいろな事情を抱えながらも影響されていく」というイメージがあったからこそ、それが反映されているのかもしれません。
視聴者の皆さんからも「一人一人の人物造形がしっかりしている」「キャスティングがハマっている」など、うれしい反響をいただいています。
もちろん、キャスティングは私ひとりで行っているわけではなく、ディレクターやプロデューサーを含めて、みんなで案を出し合っています。私も知らなかった役者さんもたくさん出てもらっていますし、そういった新しい出会いがあるのが面白いです。
“ヤバ藤”こと高藤役の伊礼彼方さんも、舞台好きなディレクターから上がったアイデアだったんですよ。
「新しい役者さんを見てみたい」とチャレンジした結果、意外な盛り上がり方をして、他のスタッフの頑張りが認められてうれしいです。
――東大の植物学教室の面々はモデルがそれぞれいる一方で、長屋の個性豊かな住人たちはオリジナルとのことでしたが、キャラクターはどのように作っていったのでしょうか?
第6週を書いてもらう前の段階で長田さんと話し合い、「こういう人がいたら面白いよね」という話をしてから作ってもらいました。じっくり作れたのが良かったですね。
ただ、長屋は思ったより長く描くことになったなと。当初は結婚したら出ていく程度に考えていたのですが、結局そのままいることになりました。長屋の皆さんもそれぞれキャラが立っていて見せ場があり、予想以上に伸びている印象です。