俳優の杉咲花が、11月6日に都内で開催された映画「市子」(12月8日[金]公開)の完成披露舞台あいさつに、若葉竜也、森永悠希、中村ゆり、戸田彬弘監督と共に登壇した。
演じ手としての貴重な経験を明かす「すばらしい体験をさせてもらった」
同作は、戸田監督が主宰する劇団チーズ theater 旗揚げ公演作品であり、サンモールスタジオ選定賞2015で最優秀脚本賞を受賞した舞台「川辺市子のために」を、監督自ら映画化したもの。過酷な宿命を背負った一人の女性の切なくも壮絶な人生を描く衝撃作。
川辺市子(杉咲)は、3年間一緒に暮らしてきた恋人の長谷川義則(若葉)からプロポーズを受けた翌日に、突然失踪。途方に暮れる長谷川の元に、市子を捜しているという刑事・後藤(宇野祥平)がやってくる。後藤は、長谷川の目の前に市子の写真を差し出し「この女性は誰なのでしょうか?」と尋ねる。市子の行方を追う長谷川は、これまで彼女と関わりがあった人々の証言から、かつての市子が違う名前を名乗っていたことを知る。
舞台あいさつでは、杉咲が公開まで約1カ月に迫ったことについて「感慨深いですね。完成披露の時期になると、あっという間に初日がやってきて、気付いたら観客の皆さまの元へ届いているという感覚なので、高揚と同じくらい寂しさもあります」と述懐。
また、撮影を振り返り「味わったことのない経験をさせてもらったなと思います。演じ手として『こう表現しなければ』みたいな“欲”が剥がれ落ちて、ただ起こっていることに対して反応してしまう時間、ぐわんぐわん心が揺さぶられるような時間を、演じていて過ごせたのは初めての体験で、それだけ引力のある作品だったんだなと改めて感じさせられますし、すばらしい経験をさせてもらったなと思います」と語った。
役者魂を折るほどの酷暑の中、杉咲花が猛烈なツッコミ
そんな中、監督が「この作品は夏がテーマになっていて、僕のわがままもあり『真夏に撮りたい』ということで、(2022年の)8月の夏の真っ最中に撮影したんですけど、地獄のように暑かったよね」と回顧すると、杉咲が「本当に暑かったですよね。そんな中でスタイリストさんを通して聞いたんですけど、若葉さんがこの作品に挑むに当たって『かく汗を大事にしたい』とおっしゃってるって。『やはりそういうものが映像に沸き立ってくるものだから』っておっしゃってるって聞いて、『さすがだな。自分も見習いたいな』って思っていたんですけど、ある撮影をしていた時にパッと横を見たら思いっ切り氷のうを当てていて、『めっちゃ涼んでんじゃん!』って思いました(笑)」と暴露。
若葉は苦笑いしつつも、「本当にちょっと体調崩すぐらい暑かったんですよね…。でも、かいている汗は本物です!」と弁明し、会場を沸かせた。
◆取材・文=原田健