「直虎」和田正人、常慶の感情が表に出たことの喜びを明かす
和田正人が、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)に出演中。諸国を行脚しながら情報を集めている山伏・松下常慶を演じている。
徳川家康(阿部サダヲ)からの情報を直虎(柴咲コウ)に伝える役目を担う常慶は、その任務上、感情を表に出すような人物ではなかったが、第39回(10月1日放送回)からは、虎松(菅田将暉)との関わりの中で感情を表に出すシーンも登場するように。そんな役どころに変化が生まれてきた常慶役の和田に、演じる上でのこだわりなどを聞いてみた。
――「―直虎」に出演が決まった時の気持ちを教えてください。
ミュージシャンの方が紅白(歌合戦)にいつか出たいと思う心境に近くて、大河ドラマというものが俳優という職業にとっての紅白だと思っています。その大河ドラマへ出演が決まって、プレッシャーがとても強かったんですけれども、喜びも大きく、「ここまでようやくたどり着いたな」という1つの目標を達成した感じがありました。
また、僕の役者人生の転機になった作品、連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年、NHK総合ほか)の制作統括である岡本幸江さんと脚本家・森下佳子さん、そして音楽の菅野よう子さんが再びタッグ組んだ作品に関われたことができて特にうれしいですね。
――常慶という人物を演じている感想を教えてください。
なかなか陰のある人物で、何を考えているのか、どういう役割なのかも初めは分からない。謎めいたまま、さまざまな情報を伝える人物として直虎たちと関わっていく。難しい役どころだなと思いながらも、役者としての次のステップを踏む課題となりました。
「ごちそうさん」の時は、“関西の気前のいいお兄ちゃん”を演じさせていただいて、自分の役者としてのパーソナルな部分をお茶の間に届けていけたと思うんです。その時の演技が「和田っぽいね」と言われることも多かったんですが、今回は、そういった雰囲気とは違う人物で、新しいチャレンジを与えていただいたなという感じでした。
――虎松が松下としてではなく、井伊として家康に仕えてしまった時の常慶の気持ちは?
常慶には「唯一、兄の存在が救いだ」というせりふもあるくらい、兄が大切なんです。なので、虎松への思いというより、兄・源太郎(古舘寛治)に対する思いが強いですね。常慶はずっと陰で働き、描かれてはいないですが、人前では語ることができない仕事もしてきたと思うんです。
そんな中、せっかく奥さんと養子をもらった兄が、ようやく人としての幸せをまっとうできるだろうなという時に起こった出来事ですから、兄がふびんだったんでしょう。なので、虎松に対しての言動も怒りの方向に向いていたのかなと思います。草履をぶん投げたりしていましたからね(笑)。
――虎松への怒りなど、常慶にも感情が出てきたように見えますが?
第39回以降、松下家が徳川の家臣としてちゃんと仕えるようになってからは、今までの陰としての存在ではなくなったので本来の常慶の人間味みたいなものも出していこうかなと思ったんです。なので、少し喜怒哀楽を表に出して演じるようにしました。もちろんいきなり、人が変わったようにはできませんが(笑)。
――感情を表に出さない常慶から、少し感情を出せるようになり、どのような心境ですか?
今までは、直之役の矢本悠馬君たちが大声を張って演技している姿がうらやましかったです(笑)。ですが、喜怒哀楽を出さない陰としての存在だった常慶が、ようやく人間味を出せたので、長く積み上げてきた貯金を散在する時が来た感覚です(笑)。そういった新しい常慶の姿を楽しんでください。
――直虎の代から虎松の代へと流れていく中で感じたことを教えてください。
井伊谷の人々はもちろん、ここまでこの作品に関わってきた人たちみんなが「どうなっていくんだろうな」という緊張感が強かったですよね。ですが、いざ第39回、第40回の台本を読んだ時は腹を抱えて笑いました。
井伊谷も平和になって、鳥を追いかける六左衛門(田中美央)の描写や、近藤(橋本じゅん)を裏で操り井伊谷を美しい里に変えた直虎の手腕を目の当たりにし、般若のような表情をする虎松の描写など、ギャグ的な要素が多く入ってくるんです。今までの直虎のつらい人生がずっと“ふり”で、森下さんはこれを描きたかったんじゃないかなと思いました。
――菅田将暉さんの印象はいかがですか?
台本に描かれている虎松の姿が、菅田将暉さんの姿ですぐに浮かんだんですよね。本人は、「初めての時代劇で小細工などできないから、ぶつかって行くしかない」とおっしゃっていたんですが、その感じがまさに虎松にぴったり合っていました。本人もそれに気付いているので、想像以上の虎松でしたね。