「NHKっぽさの中にNHKらしくないものを忍ばせるのが僕の理想」【「オドモTV」プロデューサー / 河瀬大作】
“コドモ”たちが考えた、ちょっとハチャメチャな物語や歌、ダンス、デザインを、“オトナ”である一流のアーティストたちが表現していく――。子どもの自由な発想が大人の遊び心も大いに刺激してくれる話題の番組「オドモTV」(NHK Eテレ)。昨年9月にパイロット版が放送され、この4月からレギュラー放送が始まった本番組をプロデュースしているのが、NHKエンタープライズのエグゼクティブ・プロデューサー・河瀬大作氏だ。これまで「クローズアップ現代」(現「クローズアップ現代+」1993年~)、「プロフェッショナル 仕事の流儀」(2006年~)、「あさイチ」(2010年~)、「おやすみ日本 眠いいね!」(2012年~)などなど、NHKの人気番組の制作に数多く携わってきた彼に、番組作りへのこだわり、そして最新作「オドモTV」の見どころを語ってもらった。
僕の中では“子ども番組を作る”という発想そのものがなかった(笑)
──「オドモTV」の企画の立ち上げは、映画プロデューサーとしても有名な川村元気さんとの出会いから始まったそうですね。
「映画『君の名は。』(2016年)が大ヒットしたときに、僕が当時、制作統括を担当していた『あさイチ』にゲストとしてお呼びしたことがきっかけで、川村さんとのご縁が始まったんです。僕は今、『渋谷のラジオ』というコミュニティラジオ局で、日本テレビの土屋敏男さんと一緒に『渋谷のテレビ』というプログラムのパーソナリティを務めさせていただいているんですが、そこにも川村さんに出ていただいたことがあって。その打ち上げのときに、川村さんから『Eテレで子ども番組をやりたい』というお話が出てきた。それは面白いと思って、去年の2月くらいからブレストを始めたんですが、その会合に、現在番組にご参加いただいている岩井秀人さんや森山未來さんたちが急に現れて(笑)。川村さんと同じように『子ども番組をやってみたい』という人たちが大集合しちゃったんですよ。その後、こうしたメンバーでブレストを重ねる中で、“子どもによる原作を大人が形にしていく”という番組の方向性が決まりました」
──河瀬さんとしても、子ども番組を作りたいというお気持ちは以前からあったんですか?
「正直、僕の中では“子ども番組を作る”という発想そのものがなかったです(笑)。今まで手掛けてきた番組を見ていただければ分かる通り、僕の場合、ジャンルに対するこだわりって、ほとんどないんですよね(笑)。ただ、常に、ちょっとはみ出したこと、面白いことがやりたいとは思っていて。で、どうせはみ出すなら、いたずらにはみ出すのではなく、“真面目にはみ出す”ことを目指したいなと。その意味で、『オドモTV』は、子どもたちに楽しんでもらいつつ、大人が見ても面白いという、新しい番組に挑戦したいという思いがまずあって。だったらEテレでやるのが面白いんじゃないかと。『オドモのがたり』とか『オドモおどり』といった企画も、ああいう振り切った過剰なことをやれるのは、Eテレならではの面白さなのかなと思いますね。『オドモのがたり』なんて、もしかしたら初見の方は、何を表現しているのか分からない部分もあるかもしれない。だけどその分、想像できる余白があると思うんですよ」