独断と偏見のレビュー
ここで国家権力に刃向うつもりは毛頭ないが、警察というのは組織的に「事件が起きてから」じゃないと動けないのが原則。だから犯罪を未然に防ぐ刑事の活躍を描く、と聞いた時に違和感を覚えた。
これまでの刑事ドラマでも「だから危険だって忠告したのに…警察は無力だ!」的な描かれ方をされがち。しかし、この作品ではそんな悲劇が起きる前に解決してしまおうというんだから、斬新だ。
いざ見てみると、違和感って何? と、むしろ自分の脳内に違和感を覚えるくらいしっくりきた。
本作の鍵を握るのがAIを用いた未然犯罪捜査システム。これを使えば、これから犯罪をおかしそうな人が分かるという。しかも9割の確率だって、すごくない?
横山演じる山内は「100%じゃないんだ」と否定的な見方をしていたが、9割ってかなりすごいこと。あのイチロー選手の打率だってシーズン通算で4割を超えたことがない。
毎回ヒットを打っているようなイメージのイチロー氏でも最高3割台後半だってのに、その倍以上とは…。うん、絶対間違っている比較論だということは“百も承知”だからクレームのコメントはちょっとだけ待ってほしい。
そのシステムチックな部分はさておき、冒頭の座長・沢村の狂気じみた表情には驚いた。
近年は正義の味方寄りのキャラクターを演じる機会が多いからこそ、いつもの沢村との表情のギャップは、ギャップ萌えならぬ、ギャップ怖ぇ。
そして“ミハン”のリーダーになった沢村演じる井沢のアクションも実にいい。普段はひょうひょうとした、つかみどころのないキャラクターだからこそ、いざという時のキレのある動きがより鋭く見えるのかも。
アクションと言えば、バッサーこと本田翼の回し蹴りも実に芸術的だ。独特のタメ口っぽい言葉遣いもさることながら、あの冷たい視線に容赦ない蹴り技…これは“ドMホイホイ”ですか? あっさり釣られた。
バッサーの蹴りだけでもドラマを見る価値ありだ。
あとは、前シリーズからの引き継ぎキャラともいうべき山内(横山)。山内の存在があるからこそ、視聴者が「絶対零度」ワールドに入り込める。こちらもアクションの見せ場があるので、ファンは見逃さないように。
その他、平田満&柄本時生というかめばかむほど味が出てきそうなキャラクターをチームに配置することによって、うまくバランスを取っているし、“骨伝導フォン”もどこの携帯会社でもいいから早く出てほしい。
近未来の警察の姿をフィクションという形で見せてくれているし、いい意味で現実離れした気分も味わえる。これこそドラマの醍醐味(だいごみ)だ。
と、偉そうにコラムを書いているが、2回見て2回とも話に集中し過ぎてメモする手が止まってしまったほどわれを忘れてしまい、4度目でようやく全体が見えてきたところ。
これまでの「絶対零度」シリーズとは一線を画す代物であり、過去作品を見ていなくとも別モノとして楽しめる。
そして現時点では違法捜査であるということを理解しつつ、犯罪を未然に防ぐために奔走する彼ら。
未然犯罪捜査システムが真っ先に感知すべきなのは彼らな気がしないでもないが、このドラマがきっかけとなって実際にこういうシステムが導入され、少しでも犯罪の件数が減る、“明るい未来”がくることを切に願う。
あ、でもここまで生活を監視されていたら、あんなことやこんなことをしていることがバレちゃうな。
うん、駄目だ真っ先に疑われるから、もう少し筆者が老いてからでお願いしますね。
文=人見知りシャイボーイ