主演男優賞は菅田将暉 『ドラマには夢がある、と思えました』【ドラマアカデミー賞】
真っ向勝負だった生徒たちとの“セッション”…「みんな愛しかった」
――一颯の病気が進行しやせ細っていく様が印象的でした。体重はどのぐらい落としたのですか?
病気になってやせるというのは実はリアルではないかもしれないけれど、それをやったのは単に“誠意”ですね。見る人にひとこと、ふたことのセリフをちゃんと聞いてほしいから、「そのためだったらなんでもします」と思って、僕なりの誠意でやったことでした。体重は正確には計っていませんが10キロちょっとぐらい落として、ズボンのベルトの穴は5個ぐらい減りました。でも、やっぱり体重が減ると体力もなくなるので、大変でしたね。
インフルエンザなどが流行っていた時期で、冬で免疫力が落ちる中、撮影では同じスタジオで3ヶ月間、叫んでいたりするわけです。でも、僕が風邪をひくわけにもいかないので、なんとか乗り切るしか…。本当に初めてだったんですよ、お芝居していて鼻血が出るなんてことは。終盤、黒板に手を置いてナイフで刺すシーンでは鼻血が出ちゃって、生徒役の子たちもびっくりしていました。血を流す場面で鼻血って、狙いなのかリアルなのか分からない(笑)。きっと僕の鼻の免疫が限界になったんでしょうね。
――生徒役の30人のキャストとの共演はどうでしたか?
いや、みんな愛しかったですね。「かわいくて仕方ない」という感じ。僕としても、座長として、また年上の先輩として立ち振る舞えるようになったのは今回が初めてでした。
クランクインしたときはどうしようかなということだらけだったんですよ。教室に入ると、みんなが「こいつ食ってやる」って目で見てきて。僕も「お、いいぞ。でも、俺が絶対一番面白いから」って大人気なく(笑)。やっぱり1対30なので、僕は30人がいつどんな球を投げてきても返せるようにしなきゃいけなかった。生徒たちを黙らせなきゃいけないけれど、言うことを聞くような年代ではないし、そこでのセッションが面白かったですね。
クランクアップしてからもみんなが連絡をくれたり、「ご飯、連れてってください」とか言ってくれたりします。本当に先生と生徒のような距離感というか、そういう眼差しで接してくれる関係というのは“一生もん”だと思っています。
取材・文=小田慶子