真木よう子「傷つけてくる人に割く時間はない」人間関係の幸福のカギは“鈍感力”
言葉だけを鵜呑みにするのではなく、相手の挙動を分析することが大事
本作は、2018年7月、第159回直木賞を受賞した島本理生の同名小説が原作。環菜と由紀のやりとりを中心に繊細な女性心理を巧みに描き、目に見えづらい“心の闇”を臨床心理の視点からひもとき、罪や家族、愛情といった究極のテーマに焦点を当てていく。
真木が演じるのは、父親殺しの容疑で拘留されている環菜のルポを書くために、彼女と向き合うことになる由紀。環菜が両親に確執を持つのと同様、由紀自身も父親との間にあるトラウマを抱えている。
「由紀は強い人間ではないと思っていて。強さを兼ね備えているように見えるけど、その背景には辛い経験があり、それを乗り越えたように見せて、今も乗り越えている最中の人間らしい役。環菜と接見していく際中で、環菜と自分を照らし合わせてしまうんです。公認心理師としては失格的なこともしてしまいますが、由紀でなければ分からなかった環菜の感情もあったと思います」
そんな由紀を演じる中で、真木が大事にしたというのが“まなざし”だ。
「環菜は、人が生まれてまず受けるべき親の愛情を受けていませんが、由紀がそれを全部代わりにしてあげられるかといったらそれはできない。けど、環菜の気持ちを受け止め、見守るという“まなざし”を、由紀は持ってないといけないと思って。裁判のシーンで環菜が話すところを見ているシーンでは特に気を付けました」
公認心理師は人に接し、その相手のことを理解していく職業。同職について調べ、演じることで、人との関わり方において大事な学びがあったという。
「さまざまな患者さんがいて、必ずしも患者さんが言葉にしたことが全てではなくて、SOSはいろいろなところに出ているんです。なので、言葉だけを鵜呑みにするのではなく、目の動きやしゃべり方など細かな挙動を見て、相手に何が起こっているのかを分析することが大事だと教わりました」