大木氏「最前線が見える場所を探すのに苦労しました」
――屋外に100台のカメラを設置する上で、大変だったことはありますか?
大木:今回は、ドラマ本番の現場だけではなく、準備段階にもカメラを仕掛けました。助監督のスタッフルームや、スタッフ一同が介して行われる技術打ち合わせなどの現場にも設置し、ドラマ本番までの過程を追うような形で撮影しました。ドラマ本番の撮影では、現場が草原のような場所だったので、全貌が見える位置や、一人一人の動きが捉えられて、最前線が見える場所を探すのに苦労しました。また、ドラマ自体の撮影もあるので、映り込まないようにカットごとにカメラの角度を変えて撮影をしていました。
――100台のカメラで撮影をする番組ということもあり、やはりカメラの設置場所を決めるのが一番大事な作業なのでしょうか?
桜井:一番とはなかなか言えないですが、撮影によっては、事前の取材でカメラの置き場所を決めていくことが非常に大切です。ただ、何が映っているのか、全ての撮影素材を見てみないとわからないので、ディレクター自身が編集室に行って、約1000時間の映像を30分にまとめていく作業も重要で、全て甲乙つけがたい大変な作業です。
大木:現場の状況は把握できますが、どんな会話をして、何が行われているかというのは編集室に入ってみないと分からないので、撮れているものを見逃してしまうことが一番怖いです。普通のドキュメンタリーの撮影では、現場の状況を基に構成をしながら、撮影を進めていくことが多いですが、今回に関しては、撮影が全て終わった段階で構成していく流れになるので不安はありました。どこかにカメラを置いておけば撮れるという訳でもなく、事前取材がとても重要だと思っています。
大木氏「取材した身としては断腸の思いです」
――1000時間分の映像を確認するうえで、苦痛や大変だなと思うことはありますか?
大木:ラッシュ(撮れている素材を確認する作業)の時間は多かったですが、私自身、大河ドラマのファンということもあり、ドラマ部の皆さんの動きや、お仕事は非常に興味深かったです。本当にすてきな方たちがたくさんいたので、私も楽しみながら作業をさせていただきました。
――泣く泣く落とした場面はありますか?
大木:たくさんあります。今回は、演出の方々に絞っていますが、演出の中にも馬担当の方など本当にいろいろな方がいますし、美術の方たちが集まる美術会議なども撮らせてもらって歴史的な用語が飛び交う面白い現場でした。美術の方たちは、大河ドラマの世界観を作り出さないといけない人たちなので、とても興味深かったのですが、今回はアバンという最初の部分で紹介するだけになってしまいました。本当にそれぞれの方が、プロフェッショナルで情熱を捧げられているので、全体的にもっとたくさん紹介したいなという思いはありました。取材した身としては断腸の思いです。