2018年に連載がスタートした二宮正明のサスペンスコミックを実写ドラマ化した「ガンニバル」が、2月1日(水)にクライマックスを迎える。都会から遠く離れた山間にある“供花村(くげむら)”が舞台で、主人公は事件を起こして村の駐在として左遷されてきた警察官・阿川大悟。犯罪とは無縁に思われるのどかな村だが、一人の老婦人の奇妙な死をきっかけに、大悟はこの村の異常性に気付き始める。この主人公・大悟を務めるのは柳楽優弥。映画「誰も知らない」をはじめ、多くの作品で印象に残る演技を見せたが、この「ガンニバル」でも視聴者の脳裏に深く刻まれるような“狂気”に満ちた演技が話題となっている。最終話となる第7話の配信を前に、ここまでの柳楽の演技を振り返る。(以下、第6話までのネタバレを含みます)
正義感の強さゆえ“暴力警官”に
警察官だった大悟が供花村の駐在に左遷されたのは、“ある事件”を起こしたことが原因。正義感の強さからか、本来の性格なのか、犯人逮捕時に過剰な暴力を加えるのが日常となっていた大悟は、屋上に追い詰め、パンツ一丁の犯人にも手加減など一切せず、馬乗りになって殴り続けるほど。同行した刑事たちが止めに入らなかったら犯人を殺してしまうのでは、と思うぐらいの勢いだ。
そして、“殺してしまうんじゃないか”ではなく、“殺してしまった”のが、左遷の原因となった事件だった。10歳以下の児童を狙った性犯罪者、今野翼(三河悠冴)。大悟の娘・ましろ(志水心音)は他の被害者と違って、今野に触れられたわけではなかったが、今野は「愛してるから、ましろちゃんに触れられない」と大悟の娘を特別扱いしていた。大悟はその理由を今野自身から聞かされていたが、ましろが自ら今野の家に入って行った時、大悟のメーターが振り切れてしまった。
娘の前で被疑者を銃殺
大悟が今野を追い詰め、追い詰められた今野は自暴自棄になってましろと心中をはかろうとした。ましろは今野がしていたことを知りながら、“かわいそう”だといってかばったりしたことも大悟にとって許せないことだったのだろう。娘の首に刃物を当てた今野を、娘の前で撃ち殺してしまった。“正義”と表裏一体のところにある“狂気”。どちらに転ぶのか分からない危うさを、柳楽は見事に演じ切っている。
ある意味、自分自身の中の“正義”や“善”に対して真っすぐ過ぎるがゆえに、視野が狭くなってしまうというのは供花村に移住するようになってからも顕著に表れている。普通の駐在であれば、赴任したばかりの土地の人たちとトラブルなく生活するために“協調性”を重んじるはず。閉鎖的な狭い村であれば特に気を付けなければいけないことでもある。しかし、いきなり後藤家の人たちと一触即発の状況になって大勢に銃口を向けられたりしても、一歩も引かないのが大悟。後藤家以外の供花村の人たちとも次第にぶつかることが多くなっていく。
ましろが作文で“暴力警官”と書いたぐらい、大悟の暴力性は隠せないくらいのものだったと思われるが、ただ単に暴力を振るっているわけではないのも分かってくる。大悟の“狂気”のスイッチが入るきっかけとなるのは、“家族”と“子ども”。娘のましろを守ろうとして発砲し、妻の有希(吉岡里帆)を守るために供花村の人たちにも臆せずに突っ込んでいく。第6話で、有希とましろを安全なところに連れていき、自分だけ供花村に戻ったのも、奉納祭で“子ども”が犠牲になることを阻止するためだった。有希も大悟のことを理解し、本当は3人一緒に村を離れたいけれど、“子ども”を救うためだから大悟が戻るのを許した。
