【テレビの開拓者たち / 大根仁】「常にポップなものを作り続けたい」
ジャニーズメンバーの主演で、小劇場演劇の戯曲をドラマ化する「演技者。」(2002年フジ系)や、「アキハバラ@DEEP」(2006年TBS系)、「湯けむりスナイパー」(2009年テレビ東京系)、そして一大ブームを巻き起こした「モテキ」(2010年テレビ東京系)など、数多くの深夜ドラマを手掛け、今夏、「ハロー張りネズミ」(TBS系)で、初めてプライムタイムのドラマの脚本・演出に挑んだ大根仁氏を直撃。9月15日(金)に最終回を迎える「ハロー張りネズミ」の制作裏話を語ってもらうと共に、9月16日(土)公開の映画「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」など、近年は映画監督としても活躍する彼に、これまでの創作活動を振り返ってもらいながら、あらためて大根作品の魅力に迫った。
演出と脚本の両方を担当するのは無謀だったなと後悔してます(笑)
――「ハロー張りネズミ」は既にクランクアップされて、現在編集中とのことですが、全話を撮り終えてのご感想は?
「エピソードごとに全く違う雰囲気のドラマにしたいなと思っていたので、そこの狙いは上手くいった気がしますね」
――今回もそうですが、「まほろ駅前番外地」(2013年)、「リバースエッジ 大川端探偵社」(2014年、共にテレビ東京系)と探偵モノが続いていますね。
「探偵モノって割と、どんなストーリーでも許されるというか、たどり着く先も自由みたいなところがあって。例えば警察モノだと、最後は犯人を捕まえなきゃいけない、医療モノだと病人を助けなきゃいけない、という縛りがありますけど、探偵モノだったら、どんな依頼が来てもいいし、悪いヤツを捕まえなくてもいいわけですよ(笑)。その辺が、雑多な性格の自分に合ってるんでしょうね(笑)。第1話(7月14日放送)で、死んだ娘にそっくりな女の子を探してほしいという依頼が来る、というエピソードをやったんですけど、あれなんかは、まさに探偵モノじゃないと成立しない話だと思うし」
――「まほろ」に続いて、再び瑛太さんを主演に起用したのは?
「役者としての瑛ちゃんがすごく好きなので、また撮りたいなと。彼は、巻き込まれる役がすごく上手いんですよ。“受け身の演技”というのとも違う、どんなことが起きても受け入れてしまう、みたいなキャラクターを上手に演じてくれる。瑛太という役者自体に変幻自在な部分があるんですよね。主役クラスでこういうタイプの役者って意外に少ないと思うんだけど」
――「ハロー張りネズミ」では、大根さんは脚本も担当されています。ゴールデンやプライムタイムの連続ドラマでは、演出家が脚本も書くというケースは珍しいと思うのですが…。
「そうですね、無謀だったなと後悔してます(笑)。プロデューサーがいて、脚本家がいて、演出家が複数いてという、長年かけてテレビが作り上げてきた分業のシステムは、やっぱり理にかなってるんだなと」
――(笑)。とはいえ、脚本と演出を一人で務めるがゆえのメリットもありますよね。
「まぁ、僕が自分で脚本も書いてるのは、すごく単純な理由で。現場で芝居やセリフのニュアンスがちょっと違うなと思ったり、ロケハンしていて予想外にいい場所が見つかったりしたときに、自分ですぐに書き直せるから、という。やっぱりそこが大きいんですよね。あと、予算の配分が考えられるっていうのもあるかな(笑)。要するに、深夜ドラマの現場で長年やってきたことが、もう自分のやり方になっちゃってて、これが普通になっちゃったんですよ。その勘違いが全ての元凶です(笑)」