リアルに走るだけでは「監督の思い描いている演出には行き届かない」
――ドラマのマラソン指導だからこその苦労はありましたか?
僕はランニングコーチとして、普段はリアルに走っている選手を見て指導しているんですが、ドラマでは演出陣がいろいろなカメラワークで撮るのでいつもとは違いますね。
並走しているカメラや、固定して撮るカメラ、そしてクレーンやドローンもあって、僕が目の前で見て大丈夫だと思った走り方でも、映像だと質感が違う場合があるんです。
確かに、カメラワークによって見え方が違うんですよね。それは苦労したというか、びっくりしましたし、勉強になりました。画面に映るとスピード感が変わるんです。
あとは、足元に寄ったカメラワークのときには、そこを強調するような走りにしたり、画面で見るにはデフォルメを少し加えないと、監督の思い描いている演出には行き届かないんです。
――お生まれが1964年の東京オリンピックの年ということで、東京オリンピックの実現までを描く本作にはどのような思いで臨まれているんでしょうか。
ドラマに関わることが決まる前から、僕自身生まれたのが東京オリンピック開催の年で、出身地が(1960年~70年に活躍したマラソン選手の)君原健二さんの故郷であることは意識していました。
昔から君原さんは憧れの人で、それもあって長距離を始めたんです。それで大学に入って、瀬古(利彦)さんを育てた中村清監督に出会って。メダルを取ったQちゃん(高橋尚子)たちを指導する機会もあったり、自分がやっていることは、全て“オリンピック”につながることだったんです。
こうやってドラマの中で、オリンピックのことや、“マラソンの父”である金栗四三さんを現代によみがえらせる役割の一端を担わせてもらっているということは、奇遇というか、運命だと思ってます。それが自分に与えられた役割なんだと思います。