「『いだてん―』という世界の中で“河野一郎”が存在すればいいのではないかと」
――これまでに宮藤さんの作品には出演されていますが、今回はいかがでしょうか?
演じているのが実在する人物じゃなかったら、もっと変なことさせられていたんじゃないかなと思います(笑)。
でも宮藤さんの作品って真剣なテイストの中にもちゃんと笑いがあり、緩急があるので、本当にすごいなと感じています。
――河野さんは新聞記者から政治家になりますが、政治家を演じる上で気を付けたところはありますか?
この時代の政治家さんって存在感もすごいですよね、それは出そうとして出せるものではないと思うのですが…。
自分としては河野一郎さんの資料を読ませていただいて、それで感じたことを大切にしていこうと思いました。
でも、史料をたくさん読んだ後に息子である河野洋平さんが「父が傍若無人というように言われていることは心外だ。本当は周りの人に対して気を使っているところもある」とおっしゃっている文書を見て、「あ、また変えないといけない!」となったり…。
そうやって印象がどんどん変化する中で自分でも演技を変えたり、また史実と脚本の空気感が違ったりするので、その両方の側面を合わせながら、どうすれば魅力的な河野さんになるのかなと意識しました。
だから政治家だから意識するということは特になかったです。
――実在の人物を演じるということに関してはいかがでしょうか?
写真も残っていますし、顔が似ているとか似ていないとか、声も身長ももちろん違うし、色んなことを気にしだすと何もできなくなるというか…。
だからそういった要素を似せていくというのは違うのかなと思います。
そういったことよりは、「いだてん―」という世界の中で“河野一郎”が存在すればいいのではないかと。
例え河野さんがタイムスリップしてこの役をやってもまた違うと思いますし、あまりプレッシャーに思わずにやりました。
――国会で演説するシーンなども意識はされなかったのでしょうか?
もちろん国会中継がよぎることはありましたけど、誰かをまねするのではなく自分の中の思いを大切にしました。
本当はオリンピックを東京でしたいという思いがある中で戦争が始まってしまうって、今の人たちにはなかなか理解できないことだったと思うんですよ。
そんな中で自分が思う正しいこと、政治家としての在り方、そういった感情を思いっきり、腹から声を出そうという気持ちで臨みました。