「どっぷり“視聴者”になっちゃいますよね」
――現場の雰囲気はいかがでしたか?
しばらく撮影がなく、後半戦からの出演だったので放送もどんどん進んでいって…。出演するまでにどっぷり“視聴者”になっちゃいますよね。
視聴者になるって良くないなって思うんです。
物語にすごく感情移入もしちゃうし、例えば役所広司さんじゃなくて嘉納治五郎にしか見えなくなるんですよね。普段の役所さんを知っているのに嘉納治五郎にしか見えなくて、どう言葉をかけていいか分からなくなっちゃう(笑)。あんまりあっちゃいけないことだと思うんですが、「ああ、嘉納さんだ」って緊張するんです。
本格的な撮影に入るまでの期間が本当に長かったし、撮影していても放送ではまだ自分の出番じゃないところが放送されているので、全然実感がないんですよね。この時差をどう考えればいいんだろうって…(笑)。
映画とかはもちろん先に公開する作品だと分かってやっていますが、リアルタイムで追いかけてるはずなのに、時差を感じながらやらなきゃいけないというのはあまりないですよね。
僕らは夏が撮影のピークだったのですが、それも本当にあっという間。考えてみると頑張っていたのは1年の間で1カ月分くらいかな(笑)。人によっては「月1で頑張ってました!」みたいな人もいらっしゃるし。それほどこの作品では色んな人に焦点が当たっていって、そこが見ていて楽しいんじゃないかなと。
長距離と短距離の人が居て、それぞれの楽しみ方が違うなと感じました。
――視聴者になっている時間はどの役に感情移入することが多かったのでしょうか?
僕は元柔道部、一応講道館初段を持っているんです。
講道館の免状を持っている人間からすれば、嘉納治五郎という今まで歴史が取り上げてこなかった人物が、今ではもう役所広司さん以外の何者でもないっていうね(笑)。
今はもう教科書の嘉納治五郎を見ても「細いな、線が」って(笑)。「もっとごついだろうあの人は」って言いたくなるくらいにもう役所さんのイメージになっちゃっていますよね。
この物語には2人の主人公が居ますが、この物語を見守っている、骨格の要のような感じがするなと見ていて思っていました。