「いだてん―」はヒューマンドラマ
――今回、主人公が田畑政治ですが、東龍太郎を演じる松重さんから見た田畑の印象はいかがですか?
この作品は歴史に基づいた大河ドラマなので史実というものがありますよね。特に「いだてん―」は時代も近い作品だから、関係者の話が残っていることも多い。
でもある程度、宮藤さんの中でのフィクションであり、ドラマであるということも理解しています。
僕の演じる東さんは “東京都知事”という具体的で誰もがイメージできる役職についている人。
かたや、まーちゃん(阿部演じる田畑)は日本体育協会の理事なわけでもオリンピック招致委員会で役職についているわけでもない。そんな実態のわからない人にも関わらず、どうやらオリンピックを影で操っていたという“黒幕”的な役ですよね。
でも作品としては日本でオリンピックをやろうと思った人たちのヒューマンドラマになっています。
田畑政治は稀代のカリスマでありながら、インチキでもある、ギリギリの感じがしますよね。発言もとんでもないですし、現代に生きていたらおそらく潰されていたであろう人。
でも東さんは完全に同志として結びついていて、まーちゃんの熱意にうたれて都知事になる覚悟を決めました。
人と人の結びつきという点では、リアリティーを持って見ることができる作品なんじゃないかなと思いながら演じていました。
――史実に沿いながらも、宮藤さんの手によってさらに面白い人間ドラマとして描かれているということでしょうか。
そうですね。
田畑政治という人は実際にも周囲の人が何を言っているのか分からないほど早口だったそうですが、それをテレビでやるのは大変なことですよね。
でも阿部くんはそれを完全に踏襲してやっているし、周囲の人はまーちゃんの持つ熱量に乗せられて、登場人物たちもみんな動かされていく…。
オリンピック開催が近くなると、登場人物みんなかなり年齢が高いんですよ。60代、70代になっているのですが、そういう人たちがつばを飛ばしながら熱く言い争っているというのが“宮藤メソッド”と言いますか、宮藤官九郎の言葉によって役が僕らに乗り移ってくる感じがあって、非常にやりやすかったですし、痛快でしたね。