吉沢亮「意識していないところで出てきてしまいます」
――ここまで栄一を演じてこられて、いかがでしょうか。
1年以上撮影が続き、僕の中に栄一という役が染みついているような気がします。短い期間で作品を撮影するのとは違います。これまでこんなことなかったので大河ドラマならではだと思っています。
僕はどちらかというと、自分の中で意識的に切り替えて役を演じることができる、オンオフがはっきりしている方だと思っていたのですが、やはりここまで長い期間一つの役を演じていると栄一の話し方などが、意識していないところで出てきてしまいます。日常生活で出るかって言ったら違いますが(笑)。NHKに来て、スタジオに入った瞬間に栄一になれているような感覚で、面白い経験だなと思っています。
――明治編に入り、家族との交流も多く描かれます。新政府で働いている栄一と、家族の前での栄一の違いなどはありますか?
栄一は、駿府で“合本”組織を作り上げた後、明治政府に仕官します。新政府では、新しいことや正しいことやっているはずなのに、ある時ふとどこかで「おかしろくねぇなぁ」という思いが芽生えます。栄一の言葉で言いますと「胸のグルグル」というか、何か「やっていることが自分の理想と違うな…」という感情でしょうか。栄一自身も自覚していないうちに“官”の人間になってしまっているんです。
そんな中で、父様や家族と会っているときの栄一と、“官”の人間として働いているときの栄一のギャップも生まれてきます。
ずっと難しい顔をして働いているときの栄一と、家族と過ごしているときの、昔の少年のような純粋な気持ちの栄一の違いは意識しながら演じました。
――妻の千代とのシーンも多くなります。栄一にとって千代はどのような存在でしょうか。
お千代は偉大です。どんな時も栄一の味方でいてくれますし、家に帰ったらお千代が「お前様」って迎えてくれて。お千代がいなかったら、栄一はここまでいろいろなことを成し遂げられなかったのではないかと思います。
一緒にお芝居していても、母性といいますか、すごく安心できるんです。栄一とお千代のシーンは、栄一が一方的に話していることが多いのですが、その話を聞いているときの表情がすごく素敵で、ずっと話していてもリラックスできると言いますか、そういう力がお千代にはあると思います。