僕のことはもうなんとなく分かっているのではないかと
――シークレットキャストとして大竹しのぶさんが歩き巫女(おばば)として出演されました。
しのぶさんとは、ミュージカル「スウィーニー・トッド」(2013年)という作品で共演しました。それが初共演でしたが、舞台が終わってからもとてもかわいがっていただいて、お互いの舞台を観に行ったり、コロナ前までは食事にも頻繁に連れていってくださったりしていました。僕が舞台で怪我をして入院している間も連絡をくださって、いつもとても気にかけてくれます。僕も舞台のことなどたくさんご相談させていただいているので、僕のことはもうなんとなく分かっているのではないかと思います(笑)。
今回、しのぶさんが歩き巫女として出演するということは僕自身も直前まで知らなくて、台本をいただいた時も歩き巫女の部分だけ空白になっていて、「誰なんだろうな」と思っていました。以前、しのぶさんの舞台を見に行った時に、「かっきー、またどこで共演できたらいいね」というメッセージ付きのお礼状をいただいて、そのお礼状を役作りに参考にしていた太宰治さんの「右大臣実朝」という本に栞として挟んでいたので、出演されるとわかった時はとても驚きました。
頼朝という偉大な父親の存在をコンプレックスに感じていたと思います
――実朝は後鳥羽上皇との関係を縮めようとしたという印象もありますが、柿澤さん自身はどう捉えて演じているのでしょうか。
後鳥羽上皇は名付け親で、京の人が名前をつけてくれるというのは滅多にないことだと思います。実朝は、頼朝という偉大な父親にあったことはないけれど、その存在にコンプレックスを感じ、父のように振る舞いたいのにできないという思いを抱いてもいて、父親という存在が実朝にとって一番欠けている部分だと感じます。だから、名付け親である後鳥羽上皇を父親のように慕うというか、手本としてとても影響を受けていた。実朝は力を持っていないけど、京との関係を深くして後鳥羽上皇の力を借りれば、鎌倉殿として良い方向に進めるのではないかと考えていたと思います。