<いだてん>阿部サダヲ率いる新たな物語へ!第1部の名シーンと第2部見どころを演出陣に聞いてみた
大竹しのぶさんがかっこよくて、すっごく面白かったです
――撮っていて楽しいキャラクターって誰ですか?
井上:みんな楽しいですね。
西村:本当に楽しいですね皆さん。誰か一人には絞りきれませんが、撮影初期でいうと、僕は四三さんのお兄ちゃんの実次さん(中村獅童)でしたね。個人的に長男に肩入れしてしまう部分もありますが、上京する四三を見送るとき、四三さんと実次さんは2人そろって鼻水出してて奇跡だと思いました(笑)。
獅童さんのお芝居の幅もすごく広くて、あの実次お兄ちゃんは好きですね。このとつけむにゃあお兄ちゃんあって、とつけむにゃあ金栗四三あり、という感じがとても出ていました。
井上:幾江さん役の大竹しのぶさんもかっこよくて、すっごく面白かったです。兵蔵役の竹野内さんも面白かった。
西村:ペアーが面白いんですよね。宮藤さんの本がそう書かれているのですが、役者さんが生み出す化学反応がとても面白い。2人きりでオリンピックに行った弥彦と四三さんもそうですし、安仁子(シャーロット・ケイト・フォックス)と兵蔵の夫婦も、2人でいればずっと見ていられる。
井上:確かに。永井(杉本哲太)と可児(古舘寛治)もね。
一木:美川(勝地涼)とスヤ(綾瀬はるか)も面白いよね。あとは孝蔵(森山未來)と清さん(峯田和伸)も。
――スポーツだけではなく、志ん生周辺の人間関係も今作の見どころですが、浅草界隈を撮るときの面白みってどんなところですか?
井上:スポーツの部分とは違って、空気感がガチャガチャしてて面白いです。フィクションのキャラクターも多いので、実在の人々を撮るのとは違った面白さがあります。
西村:浅草のところは、決まった人たちしかあまり出てこないんです。スポーツでは時代が変わるにつれてどんどん新しい人物が出てくるんですけど、浅草には時代が変わっても変わらない人間関係がある。
孝蔵と円喬(松尾スズキ)や、小梅(橋本愛)と清さんとか、密にくっついているわけではないんですけどすごく近いんですよね。そういう関係性って、スポーツ界にはない気がします。
一木:スポーツの方は、みんないろんな立場があるんですけど、浅草の人々はそういうものを取っ払って、自由につるんでいる感じがありますね。
西村:弥彦はストックホルムオリンピックが終わったら銀行に行っちゃって、四三さんとは会えなくなるけど、清さんと孝蔵の関係はずっと変わらないですからね。自分にとってこんな友達はいるかなって考えたりもします。
――オリジナルキャラクターを動かすときに気をつけていることってありますか?
井上:みんなでワイワイしゃべりながら作ってる感じがありますね。
例えば、小梅ちゃん。彼女は遊女だから、いろんな昔の遊女の資料を持ってきてもらって、みんなで見るんです。でも、その資料だけじゃない要素をみんなでしゃべって加えていったり、衣装とか小道具とか作っていく中でも発見があります。
一木:私は何回か大河をやっているんですけど、普通はオリジナルキャラクターって極めて難しいんです。史実上の人物ばかりの中に、一人だけオリジナルの人が入ると、ものすごく不自然になってしまうし、実在の人物がやれないことをやらせようとするので、浮いてしまうことも多い。でも宮藤さんの脚本には、ハレの日だけではない日常が描かれているから、違和感がないんですよね。みんな溶け込んでいる感じがします。だから、私たちも構えなく撮ることができます。
井上:オリジナルキャラクターの小梅と、本当にいた人物の美川が出会っても、「それはないだろ~」ってならないんですもん。すごいですよね。ゆるっとフィクションが入ってくる感じが、宮藤さんの脚本の面白い部分だと思います。
――宮藤さんの脚本の“らしさ”は、どんなところだと思いますか?
井上:大成した人じゃない人物に光を当てる感じが宮藤さんらしいなって思います。金栗さんと田畑さんを主人公に選んでいるのも、大成した人じゃないからでしょうし。そういう人を宮藤さんは描きたいんだろうなとひしひし感じています。だからこそ、みんなが応援したくなるんだろうなと思います。
西村:時々、100年後の僕たちに向けた言葉が入っていることがあるんですよね。それがとても不思議でグッときます。
僕たちが100年後の未来に思いを馳せるのと同じような気持ちを、100年前の人たちも持っていたんだろうなって思えるんです。
ドラマを通して100年前の人たちと会話している気分になれるということが、このドラマのいいところなんじゃないでしょうか。
井上:大河ドラマってタイムトラベルができるものなので、どの作品でもそういう感じがあるとは思うんですが、今回は特に現代に近くなるので、より、現代の人に届けばいいなと思っていますね。
西村:100年後も見られてたらいいですね!
――永井さんが発明した肋木(ろくぼく)だって、100年ほど経った今でも残っていますもんね。
井上:そうですよね! 可児さんがドッジボールを作っていたり、ちょっとしたことが今の人と結び付けられるドラマだと思います。
一木:脚本がノスタルジーだけじゃなくて、今を生きている人に、つながってるんだよっていうことを問いかけている部分が多いですよね。